小屋での夕食が終わり、7時過ぎにKさんの挨拶で音楽会が始まった。
曲目は、まずベートーベンの弦楽四重奏第6番、5分の休憩の後はグリーグのペールギュント組曲の中の「朝の気分」(単に「朝」ともいう)であった。
プラネタリウムなどでも使われているほど有名な曲で、朝が明ける様子がよく表わされているのだが、耳が悪くなった私には何の曲かわからないほど不正確に聞こえてくる。おそらくビオラとチェロの音はとらえているらしいのだがそれも濁った低い音に聞こえる。そしてメロディーを奏でるバイオリンの音はおそらくとらえていないのだろう。
アルベニスのタンゴ、レスピーギのシチリアーナとイタリアーナ、エルガーの愛の挨拶などいずれもよく知っている曲なだけに耳に聞こえてくる音との落差に少々心が落ち込む。
音楽会のあとは小屋差し入れの料理にビールやお酒、そしてジュースでの懇親会だがアルコールと夜に弱い私はお先に失礼した。
朝、5時前に外に出て見る。ここは標高2000mを越えているので少々寒い。
カモはすでに朝食のために活動を始めている。
やがて朝日が当たってきた。
静かだった水面から霧が湧き上がる。
カモたちも気持ちよさそうに日に当たりながら水草をついばんでいる。
初めて参加した中学の同級生のN君を、ここから30分ほどの所にあるKさんの別荘に案内することになり、朝食後Kさんのご主人とともに向かった。
久しぶりに自分が設計した建物と面会する。
室内の杉板もほどよく変色して、完成当初よりも落ち着いた雰囲気になっている。
暖房に使うポット式ストーブの煙突は二重になっていて、天井につけた四角い吸い込み口からファンで押し込んだ空気を煙突の熱で暖めて床下に送り床暖房にしている。
建築家の奥山昭雄氏の考案したシステムなのだが、Kさんの願いで氏の許可を得て使わせていただいた。
五右衛門風呂も健在だ。
浴槽の周りに耐火煉瓦を積み、煉瓦と浴槽の間を薪が燃える熱がぐるりと周って煙突に抜けていく。だから体が温まるし、暖まった煉瓦のせいで零下17,8度まで冷える冬でもお湯は冷めず翌朝でもそのまま入浴できる。
下の写真はその焚口である。
伊豆に別荘を持つN君はかなり興味深そうだったが、渋滞を避けるために1時間ほど見学して帰って行った。
そのあと私も昼前に辞して小淵沢の山荘にもどった。