中央線に朱色の電車が現れたのは私が高校生のときだった。当時昭島に住んでいた私は立川駅で青梅線から中央線に乗り換えて国立にある高校にかよっていたのでよく覚えている。
当時の国鉄の電車は皆ブドウ色だった。そしてそれが当たり前だと思われていたからこの色の電車が登場したときには賛否両論あった。私は父に似て新し物好きだったからすぐ好きになった。
ただ、中央線にはそれまでにも次々と新型の電車が現れていた。まず床が木の板からシート貼り替わった。次にドアの位置ごとに車両の真ん中にあった鉄棒がドア脇の座席の端に移った。そして屋根の上にあったライトが車両のひたいにあたる部分に埋め込まれた。
しかし電車の色はあいかわらずブドウ色だった。それでも新型電車が来るのをわざわざ待って乗っていた。
そこに現れたのが朱色の電車だった。ドアが両開きになった。前面のライトは大きいのが一つ、ひたいにあたる部分に埋め込まれていた。そして側面が屋根上まで延び、樋はその内側に隠されていたから横からの姿は今の物よりもすっきりとした形だった。
その朱色の電車が中央線から消えるという。ステンレスの車体に朱の帯が引かれた電車に替わっていくそうだ。新し物好きの私は新型電車を新宿駅で見たときもすぐ好きになった。