新築中の住宅の施主夫妻から千石にあるモンゴル料理の店に我々夫婦で招待されていた。実は羊の肉では札幌で食べたジンギスカン料理での強烈な臭いに圧倒されたことがあって、二人ともちょっと気が進まなかったのだが、度重なるお誘いを断るわけにもいかず昨日その招待をお受けした。
閑静な住宅街の一角にその店はあった。表から地下へ下りる階段ですでに羊肉特有な臭いが漂ってきた。下りるとテーブルの椅子席が三つと、奥に一段上がった板の間があって、そこの二つのテーブルの一つが我々のために用意されていた。
狭い店だが、赤色が多いモンゴル風のインテリアで、我々がいる板の間の天井は牧畜民の移動式住居ゲルの天井の布で覆われていた。
最初にミルクティーとちょっと辛い突き出しが出された。そしてお豆腐。味はさっぱりしていて、いつしか羊肉の臭いも感じなくなった。
飲み物は皆はモンゴルビールだが、下戸の私はアルコール1%の、ヨーグルトのようなややすっぱい飲み物を頂いた。しかしちょっと口にあわずココナッツジュースに切り替えた。これはおいしい。
次々に出てくるのは色々に調理をされた羊肉主体のものばかり。どれもおいしい味付けがしてあり、ちょっと腰が引けていたこともいつしか忘れた。それらをテーブルに置かれたモンゴル風のパンとともに食べる。
そして出された羊の大きな肉。施主がそれをナイフで骨からそぎとって分けてくれた。これも味はさっぱりしていておいしい。日本人の舌にあわせたのかと思ったが、聞くとモンゴル本来の味付けだそうだ。しかし最近小食になった我々には量が多すぎた。
ただ野菜が出てこない。最後近くにやっと野菜を煮た料理が出てきたが油っこくてさっぱりとした感じはない。
デザートには小振りの饅頭(まんとう)が出た。これを皿のヨーグルトにつけて食べる。これもおいしい。
ここで灯りが暗くなり馬頭琴の演奏となった。まず嫁ぐ娘を送り出す曲。物悲しいメロディーは、きっと父親の気持ちに違いない。
テレサ・テンが歌った曲やモンゴルの民謡など数曲で演奏は終わった。
こんなに肉を食べたのは久しぶりだ。ウォーキングやジョギングでせっかく減らした体重がまた増えたに違いないと思いながら施主にお礼を言って店を後にした。