昨日、小淵沢にある身曾岐神社で毎年開かれている薪能を観た。
身曾岐神社はこんな田舎に?と思うほど大きく立派な神社で、敷地内には池に浮かぶ立派な能舞台がある。
薪能は毎年の大祭前夜に八ヶ岳薪能実行委員会により奉納としておこなわれており、観客は全国から来るといっていいほどの人気である。
今年も妻が早めに申し込んだのだが今回は左脇の席になり能舞台を下手横から観ることになったが、橋掛が手前にあるのでこの席もなかなかおもしろい。
演目は「経正(つねまさ)」シテは上田公威、ワキは宝生欣哉、狂言「柿山伏」シテは野村萬斎、アドは中村修一、「紅葉狩」シテは観世清和、ワキは宝生欣哉。
午後4時45分開演だが、我々は用事で少し遅れてしまい3時半に到着したので神社より200mほど離れた第6駐車場になってしまったが、もっと離れた駐車場もあるのでまあまあというところか。
神社内の茶店でなんとか席をみつけて開場まで休み、受付の列が短くなり始めた頃に並んで中に入る。
最初に舞台から宮司が矢を放つ神事「清祓の儀」が行われ、次に能楽評論家の増田正造氏による演目の解説があったが、わかりやすくてなかなかよかった。
「経正(つねまさ)」の謡が始まると、どこからかカラスが飛んで来て舞台後ろにある杉の大木のてっぺんにとまってカーカーと鳴くのも例年のこと。
野村萬斎が巧みに滑稽さを演じた狂言の「柿山伏」が終わったところで開場の数箇所に用意されている松明に火が入れられた。
そして「紅葉狩」が始まった。
すでに暗くなった闇の中で能舞台だけが照明で明るい。
大勢の女の姿をした鬼人たちが3間四方の舞台をあでやかな衣装で所狭しと舞う姿は一段と怪しい。
しかもそれが池に映ってひときわ幽玄の美を増す。
それにしてもシテの観世清和が格段にうまい。だから他の女を演じるツレの技量不足がやや目立つ。
最後に女たちはワキの宝生欣哉演じる平維茂(これもち)の神剣によって成敗されて能は終わる。
余韻が残る舞台をあとにする。
外の道は観客を迎えに来た観光バスやタクシー、そして自家用車でごった返していたが、もう慣れている係員の手際の良い誘導でスムーズに家路につくことができた。