妻と成城にある旧猪俣邸を訪ねました。建築家・吉田五十八(いそや)の設計で昭和42年、(財)労務行政研究所の理事長を務めた猪俣猛夫妻のために建てられた住宅です。
数奇屋造りの建物と庭園の美しさは一級品といえるでしょう。現在は「財団法人せたがやトラスト」で管理され一般にも無料で公開されております。なお、月曜日は休みです。
吉田五十八は和風建築で有名な建築家で、上野毛の五島美術館、奥多摩御岳にある川合玉堂美術館、吉兆、金田中などの料亭、数多くの芸術家や俳優、歌舞伎役者、政治家などの家を設計しております。ただコンクリート造を木造に見せるなどの面もあって、純粋さを求める若き学生時代の私たちは「吉田うそっぱち」などと言って好きではありませんでした。
しかしあらためてそのような造りの玉堂美術館を先日訪れてみてその美しさを感じ、若さとはいえ失礼なことを言っていたなと今ではその至らなさを恥ずかしく思います。
この猪俣邸も私が好きな建物で、過去二回訪れております。今日は初めて来る妻の案内役です。
小田急線成城学園駅から十分ほど歩くと生垣と門が見えてきます。
少し背をかがめたくなるような低い門をくぐると玄関へ導かれます。門の脇には待合のようなちょっと腰を掛ける場所も用意されております。
玄関前から左手を見ると茶室へ延びている廊下があり、ここから玄関前に立つ来客が格子窓を通して確認できます。
振り返って見た玄関踏み込みです。私の背後が正面になります。
正面で床の間風の飾り棚が迎えてくれます。右に行くと居間です。左に明かりが見えるのは茶室へ続く廊下です。
居間です。左手には庭園が広がり、右に中庭とそれに面した食事のスペースがあります。
一方こちらは茶室への廊下です。
途中にある明り取りの窓と明かりです。
茶室です。
こちらは居間から見た茶室外観です。
待合の先に門があります。
その先に蹲(つくばい)があります。写真は振り返ってみたところです。
茶室です。
茶室の前から庭に導く小道には瓦が埋め込まれています。
書斎前の庭から縁先を通すと、左手前から寝室に使われたであろう和室、たんす置き場にもなっているウォークインクローゼット、ご夫人の部屋、居間が見通せます。
実は書斎の奥に小さな茶室があと一つあり、それが大変素敵なのですが、広角でない私のカメラではうまく撮れませんでした。
560坪の敷地に112坪の平屋の邸宅。母屋の施工は木造で第一級の技術を持つ水沢工務店、茶室は丸富工務店だそうです。贅沢でよい建物を拝見させていただきました。