昔の家の軒の深さは夏は日射しをさえぎり、冬は室内奥まで日射しを呼び込むように造られていると言われ、これを説明するのに夏の太陽高度は80度近く、冬は30度近くとすることが多いがこれは疑問。
この高度は夏至と冬至の南中時であり、6月下旬と12月下旬の昼頃となる。しかし実際には「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるとおり、暑いのは7月から9月中旬、寒いのは1月から3月中旬あたりで、このときの太陽高度は昼頃で60度より大きいかあるいは小さいかとなる。
ということは夏至の日射しをさえぎるように軒の深さを決めれば最も暑いときには室内に日が当たるし、それを遮ろうと軒を深くすれば寒い時には充分日が差し込まない。
しかもこの高度は昼頃の話である。我々は昼だけ生活しているわけではない。朝から夕方まで太陽の高さは変わっていく。
このことを考えて住まいは設計されなければならない。軒の出一つにもああだこうだと考えてしまう。結局は建物の向き、周りの環境、住まう人の暑さ寒さへの感じ方、生活習慣などを考慮して「こんなところかな」というところに落ち着く。
ここにたどり着くまでには多くの経験が必要なのである。