昨日、妻と横浜の三渓園を訪れた。
生糸貿易で財をなし、その財産によって多くの文人、芸術家への援助と育成、そして芸術品の収集に尽くした原富太郎(号:三渓)が残した広大な別邸である。
暖かく穏やかな日で、庭園をそぞろ歩くにはちょうどよい。入場料は500円だが65歳以上は300円だった。自己申告なのだが、日頃若く見えると言われている66歳の私も何もいわれず無事通過。ちょっぴりがっかり。
入ると目の前に池が広がり、対岸の山の上に塔が立っている。
浮かんだ船に鵜が一羽とまり、水面をにらんでいる。
小さな島に石のようなものが同じ方を向いて並んでいる。よく見ると亀だ。甲羅を太陽に向けて干しているところだった。
たくさんの水鳥がいるが、その中で最も多いのが黒と白のきれいな鳥だ。
たまたまいたボランティアの案内の方に聞くとキンクロハジロといって、一週間後にはシベリアに向う渡り鳥だそうだ。目の周りが金色で羽が白いところからつけられた名だとのこと。
丘の上の塔が美しいのでまずそちらへ向った。山道をたどり急な階段を登る。
松風閣という展望台に着くがコンクリート造りの無粋な建物だ。目の前にはコンビナートや高速道路が見える。
眼下の公園には蒸気機関車があった。
展望台から尾根道を行くと目指していた三重塔の前に出た。立派な塔だ。京都の燈明寺から移築したもので室町時代の建物らしい。
古代の塔に比べると上層の大きさがあまり小さくならず安定に欠けるという人もいるが、私はこの方が力強さが感じられて好きだ。
塔から階段を降りて行くと初音茶屋という真ん中に炉がある東屋に着く。
昔はここで茶がふるまわれたとのこと。タゴールや芥川龍之介などもここで茶を飲んだらしい。
橋を渡ると小さな好ましい建物があった。滝口入道との悲恋で有名な横笛の像があるといわれる茶室、横笛庵だ。
こういう建物が私は好きだ。
鎌倉から移築された旧東慶寺仏殿や岐阜の白川郷から移築された改修中の合掌造りの旧矢箆原(やのはら)家の前を通り待春軒という茶屋で私はコーヒーを、妻は昆布茶と和菓子をもらう。
目の前には花桃が咲いていた。
この先には三重の塔と同じく京都から移築された燈明寺本堂があった。
これらの建物は廃寺となっていたものを保存のために移築したらしい。きれいに維持されている。
さんさんと降りそそぐ日射しの中で春の一日をゆっくり楽しむ。薄墨桜が咲いている。
猫が気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。
ここまでは外苑、昔から皆に開放されていたのだそうだ。
橋を渡って最初の場所にもどり、京都東山の西方寺から移築された立派な御門をくぐって三渓の住まいだった内苑へ入る。
ここで目を引いたのは二条城にあった聴秋閣である。
この三渓園には重要文化財10棟を初めとする建物が移築されて存在している。それによって建物自体は保存されるが、建てられていた場所から離された建物は何を思っているだろうか。
傍らの渓谷には豊富な水が流れている。こんなに湧き水が出るの?ちょうどいた案内の方に尋ねると池の水をポンプでくみ上げているとのことだった。納得!
なかなか見ごたえのある庭園散歩だった。